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須磨水族館の思い出

2010年8月17日に須磨海浜水族園で生まれたばかりのウミガメの赤ちゃん。8月19日撮影。

081905入り口大ホールの片隅にそっと置かれた小さな水槽で、元気に泳いでおりました。

ゼンマイ仕掛けのおもちゃのように動き方がややぎこちなく、それがまた実にかわいらしい。

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須磨海浜水族園は、以前は「須磨水族館」と呼ばれていた。建物が全面的に建て替えられ、海獣類も飼育するようになってから、須磨海浜水族園と名前が変わった。

水族館時代には、入り口のホールにウミガメのプールがあった。わたしはそこでウミガメを見るのが好きだった。確か3歳か4歳の頃のこと、父が毎週のようにわたしを水族館に連れていってくれた時期があった。

行くとだいたいの行動パターンはきまっていた。入場券を買ってホールに入ると、父はまず一服するために、入ったばかりのホールを突っ切って、水族館併設の遊園地に繋がる扉から外に出る。はじめはわたしも父について外に出ていたような気もするが、そのうちにウミガメを見て一服する父を待つようになった。

父がタバコを吸い終わっても、わたしはまだ飽きずにカメを見ていた。

当時は一頭だけタイマイがいて、他のウミガメと比べて小柄なこのカメだけは、常にせわしなく泳ぎ回っていた。ほかの大きなウミガメたちは、それぞれがゆったりと、浮かんでいるのや、泳いでいるのや、いずれにしても、ボンヤリ眺めるには格好の相手だった。

時々は眺めているわたしを偵察しに来るカメもいた。あんまりじっと見ているから、カメの方が興味を持ったのかも知れなかった。

ウミガメのプールの上にはクジラか何かの大きな骨格標本が天井からつり下げられていた。巨大なあばら骨のつくる空間は、小さなわたしが入るには十分だった。ピノキオの話を想像して少しこわいような気もするのに、この標本を見るのはなぜだか嫌いではなかった。

ウミガメのいるホールは明るかったけれども、水族館というのは水槽の中が見やすいように、通路は照明を落としている。やがて父に促され、薄暗くて狭いスロープ状の通路を、さまざまな海の生きものを見ながらのぼっていくのだった。

スロープの入り口にはこれまたゆったりした動きのガンガゼやタツノオトシゴがいて、彼らもたいへんにわたしを惹きつけた。不思議なカタチのカブトガニもお気に入りだった。気付けばいずれも干潟の生物だ。三つ子の魂百までも、と言うことであろうか。

父は、そういうスローな生物をじっと眺めている娘をせかすこともなく、ゆっくりと歩いてくれていたように思う。父は、わたしを待つために、スロープを登り切ったあたりでよく淡水魚を見ていた。それから、もっと奥の方にいる電気ウナギが好きだった。当時は電気ウナギが放電すると、水槽の横に設置されたたくさんの黄色いランプが次々に点灯していく仕掛けになっていた。たくさんランプが点くと、父は単純に喜んだ。

その近くには大きなサメの標本があった。こちらは骨格ではなく、白っぽくブヨブヨした感じの皮膚もついた液浸標本だった。標本の前の四角いボタンを押すと、標本の下から明かりが照らされ、鏡にサメの腹側の様子が映しだされる仕掛けになっていた。

鏡には大きな口と鼻の穴、エラ孔や肛門が映っていた。鼻の穴は妙に離れた逆ハの字型で、それがつりあがった目のようにも見える。当時流行っていたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる妖怪の一反木綿のようで、ちょっと不気味なのだった。でもなぜだか毎回、ボタンを押してしまうのだった。

ときどきは水族館の食堂でカレーうどんを食べたりもした。食堂へ行く通路には珍しい貝の標本が展示してあって、それを見るのも好きだった。また時には併設の遊園地で乗り物を二つほど楽しんだ後、パーラーでアイスクリームを半分こしたり、母に内緒でファンタを飲ませてくれたりもした。

古い水族館と父との、遠い思い出である。

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コメント

須磨水族館! 水族園じゃなくて水族館。
実家からは歩いて行けました。

ウミガメいたね。私も好きでした^^ 上にあった骨格標本は、昔瀬戸内海に迷い込んできたシャチのものだったかな。

あの建物の中は、なんだか時間がゆっくり流れているようでした。遠い昔の話です。

投稿: ヴィスカヤ | 2010年9月17日 (金) 23時23分

>あの建物の中は、なんだか時間がゆっくり流れているようでした。

そうそう、そうなのよね~。
今の水族園は見所満載で楽しいけれども、ふと、水族館時代が懐かしくなることもあるのでした。

投稿: ミズマ | 2010年9月19日 (日) 06時51分

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