« いやがらせ目的の訴訟 「SLAPP(スラップ)訴訟」 | トップページ | くまさん »

美しき日々

19120301

11月上旬に大阪の家に帰ったとき、妹と一緒に母の遺品の片づけをした。

そのとき、わたしたちきょうだい三人が幼い頃かいた絵や日記を見つけた。

天袋の奥の奥、母がそっととっておいてくれたものだった。その場で処分しきれず、沖縄に送ってもらった。

先日、あらためてこれをひもといてみた。

目にとまったのは、黄ばんだB4サイズの厚紙10枚ほどを綴った手作りの冊子。表紙には「植物採集」というタイトルと、わたしの名が書かれている。

何年ぶりに見ただろう、父の字だった。

表紙をめくるとムラサキカタバミが貼ってあり、その下に「すいすいの花」と書いてある。神戸出身の両親は、ムラサキカタバミのことを「すいすい」と呼んでいた。

日付は昭和48年6月17日。わたしは4歳だった。

じっと見ていると、不思議なことにすっかり忘れていたいろいろのことが思い出される。

母は日頃から花を愛でていたが、考えてみると父も植物が好きだった。

植物標本の作り方は父が教えてくれた。押し花なら母もつくっていたけれども、わたしに標本用の押し葉や押し花の作り方を教えてくれたのは、父だった。

植物の特徴がよくわかるように花や葉を広げて押し葉をつくったら、直接台紙に貼りつけるのではなく、薄くて破れにくい紙で要所要所をとめるのだと教えてくれた。

そのとき手近にあったのは、レモンケーキの包み紙だった。その紙は和紙のように薄くて丈夫な材質だった。はさみのあとがゆがんでいるから、これを切ったのはきっと4歳のわたしだ。

すいすいを台紙に並べ、とめる場所を父に習いながら、貼りつけていったのだろう。標本は、その後少しずつ増えて、最後は昭和53年8月20日。小学3年生になったわたしは、日付も植物の名前も、もう自分で書いていた。けれども、あいかわらず植物をとめているのは黄色いレモンケーキの包み紙だった。

花の色はあせてしまったけれども、レモンケーキの包み紙は当時を思い出すのに十分なほど、いまも幸せそうな黄色を保っている。

|

« いやがらせ目的の訴訟 「SLAPP(スラップ)訴訟」 | トップページ | くまさん »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/212696/46929211

この記事へのトラックバック一覧です: 美しき日々:

« いやがらせ目的の訴訟 「SLAPP(スラップ)訴訟」 | トップページ | くまさん »