80円の贅沢
うちから歩いて15分ほどのところに、ちょっと不思議な花屋がある。
花屋の多くはオープンな店構えで、内装にも気を使い、おしゃれなところが多い。店の中にはショウ・ウィンドウを兼ねた冷蔵庫があって、生花の鮮度が保たれていたりもする。
ところがその花屋には、きちんと戸がある。しかも引き戸だ。全体的に質素な造りで、特徴的な看板がなければ、外からは花屋かどうかもわかりにくい。店の中の様子が分からないので、はじめて入るにはちょっと勇気がいる。
でも、一歩店の中に入れば、種類も量も豊富な切り花が並べられていて、ガラスのショウ・ケースもある。ただし、例の巨大冷蔵庫方式ではない。
ところで、特徴的な看板というのがこうだ。ベニヤ板と木材を組み合わせて作られた、幅50cm×高さ70cmほどの、脚立形をした自立式の黄色い看板。
そこに赤いペンキで「バラ一本 30円」とか、「小菊一本 10円」などの文字が大書され、沿道を行く車からもよく見えるようになっている。
古い花を特価品として出しているわけではない。どれもきちんと新鮮な花だ。どうしてこの店だけ、そんなに安いのかはわからない。
でももしかしたら、冷蔵庫がないことや、花束のラッピングが別料金になること、店の造りが圧倒的に質素であることなどから考えると、徹底的な合理化で、花を安く提供できるよう工夫しているのかもしれない。
今日は例の黄色い看板に「ガーベラ一本 10円」と大書されていた。ただし、お一人様10本限りだ。
でも実際に店の中で花を選んでいると、ガーベラ5本でも十分なボリュームがある。他にクジャク草も求めて、合計80円也。まとめて新聞でくるくる巻いてもらうだけなら、ラッピング追加料金もなし。申し訳ないくらい安いのだ。
とはいえ、低所得層のわたしが、食えもしなければ実用性もない花にお金をかけるのはやはり結構贅沢なことだといえる。
でもありがたいことに、その80円の贅沢のおかげで、やや暗いうちの台所は今、パッと明るい雰囲気になっている。
花屋の名は「めるへん」。那覇市壷宮通り在。
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