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ハゼ・カニ合戦 ~沖縄県豊見城・与根干潟~

与根(よね)は、びっくりするくらい生きものの多い干潟だった。

堤防から干潟におりる。カニ穴がたくさんあるあたりを狙いさだめてしゃがみ込む。そのまましばらくじっとしていると、まず少し離れたところで小さなカニが半身を出して、穴からそっとこちらをうかがう。

小さなカニが警戒を解いて外に出てくる頃、こんどはちょっと大きなカニがやっぱりそっと身を乗り出しはじめる。シオマネキの仲間もいるし、オサガニの仲間もいる。

それと同時に、トビハゼの仲間たちもちらほら姿を現す。

その繰り返しが、だんだん近づいてくる。

どんどん足がしびれてくるけれど、まだまだじっと我慢する。

いつの間にか、視界いっぱいに広がるカニとハゼたち…。

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息を殺す。いろんな音が聞こえてくる。

カニが餌を食べる音、トビハゼ類がはねる音、泥の中から沸き上がる泡の音…。プチュプチュ、ピチュピチュ、ザワザワ、プツプツ、、、、それはそれはにぎやかだ。

そのうちに、目の前でトビハゼとカニが喧嘩をはじめる。よくみると小競り合いはあちこちで起こっている。でも、喧嘩と言うにはあまりにもユーモラスだ。

トビハゼが頭を振り振り、餌を食べながら遠征をする。体の表面が乾かないように、時々コロリコロリと左右に転がってお肌に水分補給をする。また頭を振り振り夢中で前に進む。いつの間にか立派なシオマネキの縄張りに入っている。

シオマネキは大きなはさみを振り振り追い払おうとする。でも、ハゼの方も負けてはいない。大きな口を開けて威嚇する。そうして、跳ねる。

シオマネキは、ハゼを深追いしない。とにかく、なわばりから出ていってくれさえすればいいのだ。

ハゼはまた放浪を続ける。そしてまた、他のカニの縄張りにはいる。隣接するカニの縄張りの境界に、偶然二匹のハゼが同時に突入する事もある。そうするともう、誰が誰と戦っているのか訳が分からなくなる。

その隙に他のカニがちゃっかり巣穴を失敬、なんて事も起こる。

あぁ、どこにでもこういうヤツっているんだよな、と思わず笑ってしまう。

笑い声を立ててもカニやハゼは逃げないが、笑うと自然に体が動くものだ。こちらの動きが小さければ、カニもハゼも、ハッ! と動作を止めるだけですむのだが、うっかり大きく動いてしまうともうたいへん。カニもハゼも、ババッ! と手近な穴に逃げ込もうとして、大混乱が起こる。

それがおさまると、さっきまでのにぎやかさが夢まぼろしであったかのように、干潟は静かになる。

そうなってから、わたしはやっと、ゆっくり歩き始める。足がしびれてしまって上手く歩けないから、ゆっくりになってしまうのだ。

それでも、あの楽しさを味わいたくて、わたしはたびたびしゃがみ込み、気配を消す。自分が透明人間にでもなったような、あるいはカニやハゼを相手に「だるまさんが転んだ」をしているような、そんな可笑しみ・面白みのせいもあったが、なにより魅力的だったのは、もちろん小さな生きものたちの躍動感あふれる世界だった。どれだけ見ても、何度見ても、見あきることがなかった。

できるなら、今でも見に行きたい。オキシジミとスダレハマグリが豊富にとれた海。たくさんの水鳥が羽を休めに来たという海。

与根干潟のあった場所には今、巨大な墓標のごとき人工島が覆い被さっている。

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※1 与根干潟のアルバムつくりました。こちらからどうぞ。
※2 首里にあるエコショップえころんが発行している「えころん通信」に連載中の「-沖縄、記憶のなかの海-」 、11月号は与根干潟です。著者はわたしの友人ですが、わたしとはまた違った視点で書かれていますので、是非あわせてお読みください。

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