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突然の帰省1

「母が倒れた」と電話があったのは14日の夜、台風が最接近していたときである。癌を患い、去年末から3ヶ月に一回ほど入院して抗ガン剤による治療を受け続けている母は、一週間後の21日からまた治療のために入院する予定だった。

癌が急に増殖しているとか、もう手の施しようがないとか、最悪の場合一ヶ月しか持たないとか、とにかくさんざんなことを医者から聞かされて、妹はかなり憔悴していた。

状況が良く分からないので、とりあえず台風が去って飛行機が飛び始めたらすぐに帰ることにした。

15日には台風一過の青空になっていた。午前中に家の片づけを済ませ、正午前に家を出た。空港は予想通り昨日の航空便が欠航したため本土へ帰れなかった観光客が、長い長いキャンセル待ちの列をつくっていた。まるで「蜘蛛の糸」である。こんなものに並んでいたらいつ帰れるか分からない。とりあえず航空会社のカウンターで事情を説明して、「今日中に帰る方法はないだろうか」と訊ねると、しばらく待たされたあと、優先的にキャンセルを回してもらえるという整理券を発行してくれた。何でも相談してみるものである。

お陰で列に並ぶことなく、搭乗待合室まで行くことが出来た。ここまで来れば座って待てる。私は窓に直角に置かれた長椅子の一番窓側に陣取って、本でも読みながら落ち着いて時間を過ごそうと思った。ところが、遠慮なしに私の目の前に立って外を眺める人があとを絶たない。そしてみんながみんなカメラを構えている。確かに離着陸を見るにはいい角度かも知れないが、何で向かい合った椅子の置かれたこんな狭いところへ平気で押し込んでくるのか不思議に思い、改めて外を見た。

事故を起こした中華航空機が正面に見えた。一月前に炎上して中程からへし折られた様になった機体がそのまま駐機場に置かれていたのである。私は母や妹のこと、それからまわってくるかどうか分からない空席の事で頭がいっぱいで、外など見る余裕もなくその席に座ったのであった。ナルホド、と思い落ち着ける席に替わってから、私も一枚写真を撮っておくことにした。

3時間以上待ってなんとか搭乗券を手にする事が出来た。さらに1時間近く待って、やっと飛行機は離陸した。

091501

台風対策でネットをかぶせられた事故機。

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